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放課後、タクヤとユミは再び近くの喫茶店に足を運んだ。店内で流れる静かな音楽が、二人の微妙な距離を一層際立たせた。
タクヤは、ユミの気を引こうとするかのように、学校や友達の話題から自身の趣味や夢の話に移る。しかし、ユミは表面上は冷静に聞いているものの、心の中ではタクヤの言葉が頭の中で響き渡り、自分の感情を整理できずにいた。
「ユミ、最近冷たくなったよね。何か、僕が悪かった?」タクヤの真っ直ぐな瞳がユミを捉えた。
ユミは驚きと共に、ある種の恥ずかしさや逆上の気持ちを感じた。「何言ってるの?普通でしょ。友達同士でこんなことを気にするなんて変だよ」と言葉に込めた感情を隠そうとしたが、その言葉には明らかに挑発的な響きが含まれていた。
タクヤは少し驚いた様子を見せつつも、冷静に「ごめん、気にしすぎたかな。でも、ユミのことが気になって…」と言葉を慎重に選びながら話した。
ユミは心の中で矛盾する感情に揺れ動きながら、タクヤの言葉に反応しないよう努力した。そのまま、二人は少し緊迫した空気の中、お互いの気持ちを確かめることなく、その日の会話を終えた。
ユミは帰宅後、自分の部屋で何が自分をこんなにも不安にさせるのか、自分の感情について深く考え込んだ。サキからのラインが届き、「タクヤくんとどうだった?」というメッセージに、ユミは返事するのを一旦ためらった。しかし、最終的には「なんともないよ、ただの友達」と書き送った。
それでも、ユミの心の中にはタクヤへの気持ちが芽生え始めていたことを、彼女自身はまだ気づいていなかった。
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