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プロローグ 初恋というなの爆弾
名前がキラキラネームだとか、なよっちくて女扱いされるとか小学校の頃は悩みを多く抱えていたけれど一番の悩みはやっぱりあれだと思う。
俺は男が好きだ。
低学年の頃は自覚が無くて、ただ同級生の会話に入りづらいなって思ってた。
女子の誰が可愛いとか、どの先生が美人だとか盛り上がる会話を聞きながら漠然と感じる居心地の悪さが嫌で堪らなかったのを覚えてる。
子供ってのは残酷で、興味ないなんて口にしたら途端に面白がって騒ぎ立てるんだ。
「ななちゃんは女の子だから男が好きなんだろう」ってさ。
ななちゃんってのは不名誉な俺のあだ名。
言っとくけど、俺は男だ。
今は肩幅だってそれなりだし、喧嘩だってそんじょそこらの奴には負けない自信があるけれど小学生の頃は全然そんなじゃなかった。
腕は細いし、色も真っ白だったから女みたいだってからかわれて呼ばれた名前。
橙山七月、とうやまが名字で七月が名前。
言っとくけど「しちがつ」でも「なながつ」でも無い。
七月と書いて「ジュライ」、完全にキラキラネームだ。
幼稚園ぐらいの時は珍しがってジュラジュラ呼ばれてたけど、小学校になって皆が漢字を覚えだすと「ななちゃん」って呼ばれ始めた。
その頃は泣いてばかりいたっけな。
男子にも女子にも女扱いされるんで、居場所なんて無かった。
体育の着替えの時、上級生女子の胸がどうだとか下世話な話が飛び交ったかと思ったら流行ってるキャラ物の下着を見せあう同級生から逃げて一人でトイレで着替えてたっけ。
白くて弱っこい体なんて見られたくなかったし、他人の体なんて見たくね~し。
ただ、興味ないとも言えなかった。
同級生の体見てるより体育教師のやけに角ばった身体を見てるのが好きで、よく眺めてたな。
お陰で変な誤解をされて体育倉庫に連れ込まれかけた時もあったけど、その頃はどうして自分がそんな目に合うのか分からなかった。
自分が男をどういう目で見てたのか、まだ良くわかっていなかったんだ。
ただ大人をじっと見てるのはまずいんだなってのは何となく分かってきて、代わりに上級生の手をよく見てた。
まだ幼かった俺達とは全然違う角張った手が、羨ましいと同時に綺麗だと思ったから。
そんな俺が男が好きだとはっきり自覚したのは、小学校2年に上がった時だ。
6年に転校してきた先輩がやたらモテるって噂がたった。
やたら女好きな先輩で、転校初日から女子に声をかけまくっていたらしい。
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