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運命を感じると言えば
テレビから聞き覚えのある声が流れてくる。
『アタシたち前世からのカップルなんですぅ。生まれ変わってもまた会おうねって約束しててぇ』
『ほら、このホクロが目印なんですぅ』
近頃、よく目にするようになった2人組のタレントだ。
SNSや動画サイトが主な活動拠点の、若者世代に人気のカップルで、少しスピリチュアル寄りの不思議ちゃんキャラをウリにしている。
たまに的を射るというか、お茶の間をハッとさせるようなことを言うので、最近は年配の世代にもウケがいいらしい。令和のカリスマとは、こんな感じなのかも知れない。
「へぇー! こんな事、実際にあるのかなー」
テレビを観ているマキが言った。せんべいの残り1枚を食べながら、テーブルに頬杖をついて。
もう何年も着ている部屋着はヨレヨレで、毛玉ができている。これだけ長い付き合いともなると、ずっとキレイなままで、ブリッ子してもいられないと言う。
一緒に暮らしているし、家族みたいなものだから、むしろ安心している証拠だろう。
「それ、生まれ変わる前も言ってたよ」
向かいに座った僕は、原稿を書きながら返す。
「あっ、そうなんだ。わたし、忘れっぽいからなー」
「うん。それも言ってた」
そう言うと、返事が途切れた。
目を上げると、マキは少ししょんぼりした顔で僕を見ている。
「なんか成長してないって言われてるみたい」
「そのままのマキでいても問題ないってことじゃない?」
そう答えると、ぱっと表情が明るくなる。
「そっかー。アンタが憶えててくれるもんね」
マキにはやっぱり、笑っている顔の方が似合う。と言うか、僕はその方が見慣れている。
「まあ確かに……片方が憶えてたら大丈夫だよね」
短く返事をして、作業に戻った。
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