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「廉くん、ドラマ出るんだって!楽しみだね」
「…あー……うん。楽しみ」
お姉ちゃんももちろんだけど、廉くんもこの小学校の卒業生。
今年の新1年生ですら、知っている有名な話だ。
そして、同級生は皆、その廉くんが私の幼馴染だと知っている。
あーちゃんだって例外じゃない。
でも、だからといって廉くんと親しい素振りを見せると「自慢だ」と嫌な顔をされる。
昨日、ドラマを見ないよう言われたことも話せば、またそう捉えられるかもしれない。
ここは話を合わせておこう。
あーちゃんは、そんなこと言わないって、わかってるんだけど…ね。
――何それ、幼馴染アピール?うっざ。
前みたいに、そうやって言われて傷つかない訳じゃないから。
相手の言葉はコントロールできないけど、私が言葉に気を付けることはできる。
自分が傷つく言葉を引き出さないように、私が気を付けるしかないんだ。
「冠城さんって、ほんとにレンくんの幼馴染なの?」
竹井さんが口を開いた。
その質問の意図がわからなくて、私は返答に困る。
そうだと答えて、自慢だと言われないかな。
何かを試されてるのかな。
……ううん、何もなくて、周知の事実だと思っているのは私の思い込みなのかも。
「うん、…そうだよ」
恐る恐る答えると、竹井さんの表情がパァッと明るくなった。
「えーっ、すごーい!いいなーっ」
思いがけないリアクションに、私は呆気に取られる。
自慢だと言われてからは、廉くんの話はネガティブなものだと勝手に思い込んでいた。
そもそも、私にとって廉くんは子役タレントじゃなくて、隣に住む幼馴染。
だから羨ましがられるというのは久々――というかほとんど初めてに近いように思う。
「そ、そうかな。私はただの幼馴染だよ…」
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