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私が凄いんじゃない。
私自身はとても平凡で、周りと比べものにすらならないような立場で――。
凄いのは廉くんだ。
それはわかっているのに、くすぐったいような変な感じがした。
「ねぇ、普段の廉くんってどんななの?」
目をキラキラ輝かせて聞いてくる竹井さんの言葉を皮切りに、
「去年までこの学校にいたんでしょ?」
「レンくんって彼女とかいるの!?」
「昔から仲いいの?」
遠巻きに私たちを見ていたクラスメイトが一斉に質問してくる。
廉くんって本当に人気なんだ……その光景を見ながら、私は改めて子役タレントの人気ぶりを実感した。
と同時に、幼馴染の私がどれだけ答えていいのかわからなくて、当たり障りのない返答をした。
「彼女はいないと思うよ」
「そうなんだ!やっぱストイックなんだね」
「隣に住んでるから、それなりに…?」
「羨ましい!」
私、変な答えしてないよね?
……自慢とか、思われてないといいな。
私にとってはこれが当たり前で、日常。
でもそれが他の人にとって羨ましがられることだということは、嫌と言うほど思い知った。
だからせめて、自慢だと嫌な顔をされないように気をつけなくちゃ。
「普段の廉くんは、――ゲームしてるよ?テレビゲームとか」
「そういえばテレビでも同じこと言ってた。ホントに好きなんだぁ」
竹井さんはその後も、廉くんのことをたくさん聞いてきた。
どうやら、歳が近いのもあってずっと廉くんを――ううんレンくんを、応援しているらしい。
廉くんのタレント名は、カタカナ表記で〈レン〉くんだ。
理由は前に聞いたことがあって、〈廉〉の字を幼い廉くんが書けなかったためカタカナで活動することにしたのだとか。
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