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朝のホームルームの時間まで、あーちゃんも交えて竹井さんと廉くんの話をした。
誰かと廉くんの話をするのは不思議な感じがした。
昨日、図書室で見かけた竹井さんは少し怖くて、苦手意識を感じた。
けれど、話してみれば気さくで明るくて、話しやすい子だった。
私が誤解してただけだったんだな。
話してみてよかった。
「あ、そういえば」
昼休み、3人でおしゃべりしていると、竹井さんが唐突に話題を変えた。
「?」
「昨日思ったんだけど、冠城さんってすごく字綺麗だよね」
字を褒められたことはあまりなかった。
パパとママには褒められたことがあるけど、あの2人は何でも褒めるから、自分では綺麗かどうかずっとわからなかった。
「そうかな?」
「うん、綺麗だよ!大人の字みたい」
竹井さんはそう言って、「待ってて」と自分の席に戻ると、昨日借りた本を持って教室の後ろに戻って来た。
「ほら見て、明日香ちゃん」竹井さんが貸出カードを取り出す。
「ホントだ!シュッてしてて綺麗!」
褒められ慣れていないから、少し恥ずかしくなって私は「そんなことないよ」と顔を背けた。
「冠城さんのお姉ちゃんの、愛衣先輩も丸くて可愛い字書くよね。やっぱ、字って書く人の心が現れるのかな」
竹井さんの言葉に、胸がズキッと痛む。
確かにお姉ちゃんの字は可愛い。可愛くて綺麗で、読みやすい。
お姉ちゃんは見た目も、書く字も可愛い。
私とは大違い。
……やだ、何考えてるんだろう。
「その本、面白いよね」
嫌な考えを振り払うように、私は話題を変えた。
あーちゃんも〈黒魔女リリカ〉シリーズを読んだことがあるらしく、その後は本の話題盛り上がった。
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