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クラスメイトたちが、堂々と告白している俺と彼女を見ているのがわかった。
俺はそんな事はどうでも良かった。
人に知られる事を恐れて彼女に気持ちを伝えないなどという事はできない。
なぜなら、自分の敵はクラスメイトじゃない。
尊敬し大好きな兄、清政だ。
教育実習生の清政だ。
それ以外の人間を恐れる必要はなかった。
彼女はスッと席を立ち、教室を出て行った。
自分の中から緊張の糸が切れて、ため息のようなものが魂の抜け殻から出て行く。
肩をバタンと叩いた友人が笑った。
いやらしい笑い方で不快だった。
「おい、何どさくさに紛れて告ってんだよ!お前、安村の事が好きだったんだな」
「ああ。好きだ、悪いか」
「でも、即振られてんじゃんダセー。しかも兄貴に負けてやんの」
「そうだよ、ガキの頃からずっと兄貴に勝った事なんかない」
「あの、教育実習生だろ?確かにカッケーよな」
「兄貴は女を全部拾ってく、迷惑な存在なんだよ。早く教育実習終わんないかな」
勝沼久典はそれを聞いてハハハと声を出して笑った。
「もしかして、お前って常に兄貴に女取られて来た訳?」
「兄貴は雑食なんだ。女なら何でも喰うタイプ。ヤベー奴なんだよ」
「おい、そのうちハレンチ教員とかって、新聞に載るんじゃないのか」
「ああいう輩は女に困らんから、安全圏を狙って来る。だからヤバい女には手を出さない。けど、教員とかって一番なっちゃいけない男ではあるな」
「羨ましい」
「こっちはいつもヒヤヒヤさせられてる」
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