サヨナラを君に

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サヨナラを君に

「残念ながら膵臓癌です。ステージ4でもう手の施しようのない状態でして余命6ヶ月です」  白衣をきた恰幅(かっぷく)の良い中年の医師が表情を変えずに告げる。    ウルフカットを茶髪に染めた痩せ型の青年が、呆けた顔でそれを聞いていた。  青年の名は神宮寺京也(じんぐうじきょうや)と言い成宮市内の大学に通う大学生で20歳になったばかりだ。  身長が165センチしかないのがコンプレックだという事以外は何処にでもいる普通の青年である。 「はっ、俺。――癌なんですか。全然なんともないのに。ただの胃痛じゃないんですか」  京也が食い入るように医師に話し掛ける。 「若いですから進行が速いんですよ。症状はこれから出てくると思います。今後の治療ですがクオリティーライフを重視したターミナルケアで行きますので、神宮寺さんも遺された時間大事にしてくださいね」 「はあ、解りました」  腑の抜けた声で返す京也。 「では、お大事に」  医師がそういうと京也はとぼとぼとと診察室を後にしていた。 ――――俺が癌。嘘だろ。この間、運命の女性。橋本七瀬(はしともななせ)と結ばれたばかりと言うのに……。  橋本七瀬は幼馴染だったのだが、小6の時転校にした為もう会えないと思っていた。それなのに、大学で再会し俺は七瀬との何かの運命を感じていた。 ――――大体、胃痛以外はこんなに普通なのに……。  俺はそんな事を思いながら取り敢えず大学に向かう。  荷物を片付けなきゃだし、退学届も出さないと成らないし……。それに、七瀬には……。  京也がぶつくさと独り言を呟きながら歩いていると、大学の正門の前で身長が150センチくらいのスタイルのいい女性が、一人セミロングの黒髪を靡かせながら佇んでいた。
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