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その女性が七瀬だと気付くと、京也が七瀬に駆け寄り話す
「あれっ、待っててくれたんだ。ごめんね」
「――ちょっと、心配で。大丈夫かなぁって思って待ってた」
――――それは嘘。私は京也に死が近いのを知っている。私は私の運命を確かめるために京也の事を待っていた。
「そうなんだ。ほんとごめんね」
「ううん、勝手に待ってただけだし」
二人が寄り添いながら歩き教室を目指す。
「でっ、どうだったの」
その言葉と同時に京也に顔を向け覗き込むように見詰める七瀬。
七瀬のそれに、京也は表情を曇らせ目線をそらせて答えた。
「――それがさ、膵臓癌のステージ4らしい。余命6ヶ月だってよ」
――――やっぱ、嘘は言えんよな。と思いつつ俺は、七瀬の反応がどうなるか怖かった。
「えっ、うそ。そんな……」
そこまで言うと七瀬が泣き崩れる。
――――私って、嘘つきね。本当、これじゃ女優だわ。けどこれで……。もしかしたら……。
それを見て京也が七瀬の背中をさすりながら訊ねる。
「七瀬、大丈夫」
「うん、ごめん。私が泣いちゃって。泣きたいのは京也の方よね」
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