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「すぐにわかりますよ。では……またいつか……」 「いや待ってくれ!俺は……俺はどう……」 俺の言葉が言い終わる前にまた白い光に包まれた俺は、再び目を開ける。 ◆◇◆◇◆ 「アレース様!」 突然、殺したはずのあの女の声が聞こえた……そして抱き着かれていた。驚きともに時間が巻き戻った?と感じた瞬間から心が張り詰めていく…… 「アレース様!やっと終わりましたね!これで……これでっ!すべてが終わりです!これで……これで私も、自由になれる……」 俺はその言葉を正しく理解した。そして自分の首にある違和感を……隷属の首輪の感触を確かめ、そして同時にルーナに突き飛ばされそうになりその手をつかむ…… 「アレース様……なんで?」 「なんでじゃねーよ……俺を嵌めたことは絶対に許さない……」 「アレース様!」 俺は、背後から聞こえるディアーナの声を聞きながら、首元の首輪に手をかける……全身に痛みがはしり歯を食いしばり……そしてその首元の魔道具を、引きちぎった…… ルーナがヒッと小さく悲鳴を上げる。 俺は何とも言えない高揚感に身を任せ、口元がにやける。 「いや、違うの……お父様に命令されていて、その、いや!いやよ死にたくない!ごめんなさい!そうだ、あなたが好きなの!結婚して子供をいっぱい作りましょ!あたなの言う事なら何でも聞くわ!いいでしょ?ねっ?」 そうか。戻ったところでこの未来は変わらないのか……そう思った俺は、聖者の剣でその物体を斜めに切り捨てた…… 「なん……で……」 俺は、崩れ落ちるルーナを確認した後、ゆっくりとディアーナの方へ振り向いた。 ディアーナは剣を地面に落とし、茫然とした瞳をこちらに向けていた…… そしてゆっくりと足を進めていく俺は、最後に一言、目の前の女に声を掛けた…… 「ディアーナ……お前もグルだったのか?」 「ちがっ私は……いや、そうだな。私も所詮、姫様と同類だ……」 そして目を閉じたディアーナを、俺はルーナと同じように手に持った剣で斜めに切り裂いた…… 切り捨てる瞬間、ディアーナのその口元が少し微笑んでいたように思えた。 「残念だ……本当に……」 暫くの間、誰もいなくなってしまった魔王城の一室でため息を吐いた。何が変わったというのだ……前回は燃え尽くした二人の体が、その亡骸が……形を保ち残っているぐらいしか違いはない。 あの王にこの二人の亡骸を見せつけてやればいいのか?ふっ……それもいいかもな…… 何の気なしに俺はルーナとディアーナの亡骸を見る。ふと、ディアーナの後方に、剣戟で拭き飛ばされたのか、破けた道具袋が見えた。ディアーナが肌身離さず持ち歩いていたものだ。破けた部分から、本のようなものが見えていた。 俺はゆっくりとそこまで歩いていく。 そしてその本を拾い上げ、最初の方のページからめくってみる……これはディアーナの、日記か? ディアーナが俺との旅に選ばれた時の喜びなどが、長々と書き綴られていた……今更だな。嬉しい気持ちがあふれている文面に、どうしてこうなってしまったのだろうと気持ちが沈む。 きっと何かの拍子に恨みが募った、なんてこともこの日記には書いてあるのかもしれない……俺はその日記をパタリと閉じた。 今更何の意味がある……しかしもう一度。俺はディアーナのその心境の変化を確認したい誘惑に負け、再びその日記を開いてしまう。 次のページを読んで再びページを閉じた。まだ旅を始めたばかりのことが書いてあった。その時点でディアーナはルーナから旅の結末を聞いたようだ。俺に隷属の首輪をつけると、そしてそれに協力するようにと…… 言いようのない気持ちに唇をかみしめる。そして我慢できずにまた日記を開く。 この旅を成功させなくてはならない。そして両親へ恩返しをしなくてはいけない。両親への深い感謝と愛情を感じ取れた。 ディアーナの力強い筆圧でかかれていたその思いを垣間見る。そして、それと同じぐらい綴られているのは俺へのあこがれの言葉。そして同じぐらい何度も繰り返される贖罪の気持ち…… ページをめくるごとに強い懺悔の言葉が並んでいた。そして俺のことを、本当に愛しているとも…… 何とかして姫様の凶事を止めたいと何度も何度も……ディアーナの葛藤する心が綴られている。そして最後に綴られていたのは「姫様を止めることができなかったなら、姫様を殺して私も死のう」という言葉が大きく書かれていた…… ここに書かれていることは本当なのだろうか……であれば、なぜディアーナは最後に言い訳をしない?……いや、しようとしたのか……そして『自分も同類だ』とそう言ったのだったな…… 知らぬ間に俺は頬に流れる自分の涙に驚き、拭い、そして振り返る。 「ディアーナ……」 口から彼女の名前を呼ぶ。そして俺は、そのディアーナの亡骸に群がる魔物の群れが視界に入る。 「や、やめろー!」 全力で飛ぶようにその群れのもとに走る! 力の限りその群れを蹴散らす!ディアーナに群がるその魔物を、一秒でも早く屠らなくては……体がうまく動かない。頭が冷静ではないからだろうか。 怒りなのか悲しみなのか、その綯い交ぜになった心が悲鳴をあげる。そして剣を握り締める手がぶるぶると震えてしまう。 俺を本当に愛してくれていた。必死で購おうとしてくれた。そんな彼女に……俺は今更、何ができる……
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