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ペットの意味
ペット。愛玩犬。愛玩用猫。他に都会の事情だとウサギ、ハムスターなども多い。
春奈は今、猫を2匹と犬を一匹飼っている。
毎日のお世話は思っているよりも大変だ。
朝仕事に行くのに、犬の散歩、それぞれのエサと水の交換。トイレの始末。
それと、今調子が悪い一匹の猫の薬の投薬。
思いのほか時間がかかってしまって朝は少し早めに起きなくてはいけない。
そこで、最近テレビのCMで流れ始めたペットのお世話用AIロボットが気になる。エサや水は勿論、設定すれば犬のお散歩もしてくれる。猫の投薬は無理だが、捕獲はしてくれる。勿論お高いので買取ではなくリースだが、春奈にとっては夢のようなロボットだ。
春奈は資金面なども含め、色々と考えた。
******
ペットのお世話用ロボットが春奈の家に来て一週間がたった。
春奈は毎朝、毎夕のペットのお世話から解放された。
猫のトイレもいつも綺麗で、猫への投薬すら、すぐに猫を捕獲してくれるので、あっという間に済む。
夕方は犬の散歩もないので、会社の人たちとの飲み会にも出かけられるようになった。
そうして、一か月が経った頃、春奈は気づいた。
猫も犬も春奈の所によってこなくなっている。
いつもだったらテレビを見るためにリビングに行けばすぐに春奈の膝の上や足元に集まってきていたのに。
どこにいるのだろうと部屋を見回してみると、何とペットのお世話用ロボットの周囲に猫二匹と犬が座っている。
「おいで!」
春奈が呼んでも、誰も春奈の元に来てくれない。
よく考えたら、犬や猫って、エサをあげる人が一番大事なんだった。
その上、薬を上げている猫に限れば一番いやな薬を飲ませるところだけ、春奈がやっているのだ。近寄ってくれないのも当たり前だ。
ロボットのスイッチを切って、春奈がその日の夕方はエサや水をやり、犬の散歩にも行った。
でも、犬は散歩のルートがいつの間にか変わっていたらしく言う事を聞かないし、エサや水は口をつけても、一か月というのは犬や猫にとっては長い期間だったらしく、スイッチを切ったAIの周りにそのままみんなくっついている。
春奈は哀しくなって涙が浮かんで来た。自分が少しだけ楽をしたかったばっかりに、自分で飼うと決めたペットのお世話をロボットに頼むなんて・・・
自分はなんて馬鹿だったんだろう。
******
っと、本当に泣きながら目が覚めた。
春奈はリビングでペットのお世話用AIロボットのカタログを広げ、料金の試算をしている間に居眠りをした様だった。
猫と犬はいつも通り、春奈の膝の上や、足元に集まって、泣いている春奈を心配そうに見ている。
春奈は、
「ごめん。君たちは愛玩具なんかじゃなくて、私の家族なのに。ペット用ロボットに面倒見させようとしていたなんて。私のバカバカ。なんて無責任な人間なの!」
と、つぶやきながら犬と猫を交互になでた。
犬は春奈の涙を大きな舌でペロリと舐め、何をしているですか?というように春奈の手元のパンフレットをのぞき込むのだった。
確かに、ペットのお世話は大変だ。
もし、自分の身体が不自由になってしまった時、最低限のお世話をしてくれるAIロボットがいたらそれは助かる事だろう。
それに単なる愛玩用としてならロボットでも良いだろう。
ただ、任せっぱなしにはしないで、一緒に暮らすことは大切なのではないだろうか。話しかけたり、体に触れたり。愛情を示すことは何よりも大切だろう。
ペットと一緒に暮らしたことのある人ならわかるはず。ペットは人間に寄り添ってくれる家族であるという事を。
愛情を注げばそれ以上に素晴らしい愛情を返してくれることを。
【了】
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