0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
基本世界の田所由香里の場合
「ウンメー先生の授業、激ムズ~」
糸川漣がぼやいた。
ウンメー先生というのは、先ほどまで読者の皆さんが垣間見ていた、失礼、垣間読んでいた「運命研究概論」の教授、命田 紡のことである。担当している授業と名前の語感から「ウンメー先生」と呼ばれている。命田自身もこの呼び名を気に入っていて、
「運命の選択や仕組みを解き明かそうとしているのは私だけだぞ」
情熱的に、陶酔したように話すのである。
「難しいけど、綺麗でロマンティックだと思うなぁ」
田所由香里はときめいた表情で言った。
「私にもいるといいなぁ、運命の人」
「なぁにをおっしゃいますか! いるじゃないのよ。星矢くんが」
「恵亮くんとは、まだ...」
由香里が照れながらそう言いかけたとき
「由香里」
閃光のように別の青年の姿が見えた。
「へっ? 何、今の」
「大丈夫?」
由香里は不思議でならなかったが、のちにこのビジョンが彼女に大きく関わって来ようとは知るよしもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!