Case.3 透けた依頼

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2.略述 「基本的には現金一括払いのみの対応なんですが、成功報酬20万プラス諸経費の額に間違いなく見合う物であればなんとか……」  コーヒーを1人分淹れながら、明らかに諸事情ある葦原氏へ妥協案を出す。普段なら絶対しない対。 「祖父母から相続した貴金属のアクセサリーがあるのですが、いかがでしょうか?」  上目遣いで不安そうに尋ねる彼女に、ニコリと微笑んで返す。  情に絆されたわけではない。貴金属類、金や銀やプラチナなどは高値で取引されているし、価値が下がりにくい。長引く不景気に加えて超円安の今、投資として金を買う人が増えているぐらいだ。つまるところ、食いっぱぐれがない。  私の頭に渦巻く黒い計算式のことなど知る由もない葦原氏は、ホッとして本題に入った。 「人殺しの元カレに罰を」  本当にざっくりとまとめた相談内容だ。  彼女の元カレはそこそこ人気のホストらしいのだが、客の中で特に金払いのいい女性に結婚をチラつかせて近寄る、結婚詐欺まがいのことを行なっているらしい。 「ホストという職業なので浮気は覚悟してました。二股や三股ぐらいは想定してて、それでもハマっちゃった私も悪いんですけどね」  淹れたての熱いコーヒーを啜りながら、余計な茶々は入れずに続きを促す。 「けど彼は浮気なんてしませんでした。もちろん他の女性客からの連絡は頻繁でしたが、交際するのは1人だけ。別の女性と付き合う際は、しっかりお別れしてからしか付き合わない人だったんです」 「どうして他の女性としっかりお別れしたことがわかるんです?」 「私の時もそうでしたし、彼と付き合った女性数名と会うことがあり、聴きました」 「なるほど」  本人達が言うのであれば間違いないだろう。  葦原氏の話はなおも続いたが、特に気になったのはこの発言だった。 「最初は優しいけど、付き合いが深まると彼は豹変するんです」  なんでも、お金を出し渋るようになると威圧的な態度になり、終いには暴力までふるうクズ男だったという。  さらに詳しく話を聴き、解決の糸口が少しでも見えたら契約に移る旨を伝え、一旦お開きとなった。
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