71人が本棚に入れています
本棚に追加
4.疑問
どうやら話は終わりのようなので、1つの疑問をぶつけた。
「何が問題なの?」
「えっ?」
佐藤氏に女の霊が取り憑いていたり、通るたびに具合が悪くなるというなら相談もわからなくない。
しかし、話を聞く限り中学生ぐらいの女の子の霊は門付近に立って家を指さしているだけだ。近寄ってくることもなければ話しかけてくることもない。
つまり今のところ実害はないのだ。
「今まで視えなかったものが視えるようになるのは確かに怖いけど、怖いってだけだろ?」
「でっ、でも、もしかしたら今後なにか起こるかもしれないじゃないですか!?」
「その不安もわかるよ。でも、実害もないうちにお祓いする人ってかなり珍しいんだよ。事前に説明したけど、うちで契約して対処したら最低でも成功報酬の20万かかっちゃうんだよ?」
「そ、それは……」
言葉に窮する彼をじっと観察する。
新聞に載るぐらいの事件なら調べればすぐにわかるので、事件自体に嘘はないはず。話の流れも一応は筋が通っている。
だが引っかかっていることがあった。
「隠している、もしくは話してないことがあるだろう?」
この言葉に彼は大きく身を震わせた。
「どっ、どうしっ!?」
口ごもる様子が自白しているのと同義だった。
「1つはさっきの疑問だ。実害がない霊に高額な費用を出してまで対処してほしがるのは妙だ。20万なんて学生がボランティアで出せる額じゃないからな」
大人でもおいそれとは出せない。
「さらにもう1つ。霊が視えるようになったきっかけが明確すぎる」
「えっ?」
「君ぐらいの年なら多くの人といろんな会話をしているはずだ。なのに霊が視えるようになったきっかけが後輩との会話だなんて、断定的すぎる」
話を聞いてすぐに違和感を覚えた。
家の人や近所の人、同級生や先輩や後輩や先生など、高校生たる佐藤氏が触れ合い語らう人は多いはずだ。それなのに彼は、後輩との会話が霊を視る原因になったと確信していた。
「うぅぅ……」
「言いたくないなら言わなくていい。けど隠し事をしてるのが明らかだから依頼は受けないし、万が一受けたとしても後輩に聞けば君が隠していることはすぐにわかるよ?」
わざと冷たく言い放つと、観念したのか少しずつ真実を話し出した。
最初のコメントを投稿しよう!