ふたつの記念

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『聴診器』が通路の壁にかけてあった。 俺はなんとなく展開が予想できてしまい、ここは碧に取ってもらおうと企んだ。 「碧、これ取って」 「え…? これ、と、取ればいいの?」 ビクビクと泣きそうになりながら、聴診器に手を伸ばす。途端に壁の中から四本の白い手が伸びてきた。手を掴まれた碧は、鼓膜が破れるかと思うくらいの悲鳴をあげた。 俺は碧の反応が面白すぎて、進むたびに笑ってしまった。これだけ怖がってくれたら、このクラスのお化け役も嬉しいだろう。 その後『ネームプレート』が通路中央にぶら下がっていた。碧はもう何か仕掛けがくることを学習してしまったので、俺の後ろに隠れて見ないようにしている。 ネームプレートに手をかけると、お化けの人形が上から落ちてきた。 俺がわざと「わっ」と大袈裟に驚くと、俺以上に碧がでかい声で驚く。 もはや碧は俺にバックハグ状態でくっついているので、俺は嬉しい反面、歩きにくい。 最後の『白衣』は血だらけのマネキンに着せられていた。 懐中電灯で照らすと、マネキンの首に『白衣を着て』とプレートが下げられていた。 俺が白衣に袖を通し始めると、後ろにいる碧が小さく悲鳴を上げた。
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