出会い

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出会い

今年は少し暑すぎるような春だった。 連休が終わり、数ヶ月ぶりに登校する。 杜下(もりした)高等学校2年、久東(くとう)(つかさ)。 俺は去年、事故で足を骨折してしまい、高校1年の後半を入院とリハビリ生活で終えてしまった。 2年になって新しいクラスになっているけど、大体が顔見知りだから、何も気にはならなかった。 久々に歩く通学路。 葉桜の緑がきれいで普段よりもゆっくりと歩いた。 校門前に着くと、学年主任の先生が朝の挨拶をしていた。 相変わらず、でかい声だな。 そんなたわいもない事が嬉しくてニヤニヤしていると、先生が俺に気がついた。 「おぉ〜! 久東! 今日から復帰か、良かったな!」 「ちぃ〜す! またよろしくっす」 「なんだよ、それ。挨拶はちゃんとしろって言ってんだろ〜!」 ガハハと豪快に笑いながら「無理はするなよ」と先生は言った。 厳しい時は鬼のような形相になるが、情に厚いし、わりとフランクだから生徒からは人気がある。 さてと、と歩き出し、伸びをしようと腕を後ろに回した瞬間、ゴッと肘が何かに当たる音がした。 ギョッとして振り返ると、額を両手で抑えた小柄な生徒が立ち止まっていた。 「うわっ…わりぃ…。大丈夫か?」 心配して相手の顔を覗き込んだ。 少し長めの前髪がサラッと揺れ、涙目になった大きな瞳が見えた。 色白な透明感のある肌。 一瞬、女子かと思ってしまうほどの美男子だった。 「だ…大丈夫です…」 思考停止になっている俺を横目に、彼は足早に正面玄関へ去って行ってしまった。 「えぇ〜…、ホントかよ」 まもなくホームルームが始まる。 校門前の生徒たちも駆け足になった。 唖然としながらも俺は教室へと向かった。
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