ふたつの記念

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「久東くん、射的上手だね〜」 碧は3組からの戦利品を手にご機嫌だった。 「次どこ見てこようか…あ、りかちゃん!」 廊下で客引きをする谷がいた。 谷もこちらに気がつき「入れ」と言わんばかりに、親指で入口を指す。 「入ってけ〜! お二人さん!」 「りかちゃんのクラスって…うわ、お化け屋敷…」 碧がとっさに後退りする。碧はホラー系が苦手だ。 「私、小道具とかも色々作ったから、見ていって! もちろん、この看板もね」 おどろおどろしい幽霊の絵がリアルで怖い。 「り、りかちゃん…頑張ってね。僕らは、これで…」 逃げようとする碧を素早く引き止め、俺と共に教室へ押し込んだ。 「はーい! 2名様、入りまーす!」 暗幕により真っ暗な室内には、水が垂れ落ちるようなBGMがかかっていて、時折女のすすり泣く声が入っている。 雰囲気作りは完璧だ。 「病院でお亡くなりになった先生が、探し物をして彷徨っています。どうか…探して届けてあげて下さい…」 受付では、小さな懐中電灯と「探し物」が書かれたカードを渡された。 『聴診器 ネームプレート 白衣』 受付の生徒は、青白く顔や手を塗り、廃墟となった病院の設定だけにナース服を着ている。もちろん血だらけだ。 すでにビビりまくりの碧は、下を向きながら必死に俺の背中にしがみついている。 まだ何も出てきてないのに、何度も「やだ!」と叫ぶ。
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