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繋いでいくもの
「すみません、だいぶ遅くなりました」
俺は借りていたカメラを渡良瀬さんに返した。
「いや、全然。むしろ早かったね。いい写真は撮れた?」
「…はい!」
技術的なことは一切分からないが、気持ちとしては、どれもが最高だと思える一枚になった。
渡良瀬さんは「では、さっそく」と言ってカメラのデータを移し、モニターに画像を映した。
朝焼けの空、夕方の教室、イチョウ並木、夜の街並み、散歩中のおじいさんと犬、あとは文化祭で撮った集合写真とメイド姿の碧の計7枚。
俺はドキドキしながら、渡良瀬さんが口を開くのを待った。
「うん、いいと思う。風景ってどうしても似たようなものになりがちだけど、ちゃんと久東くんの個性が出てるね」
俺はホッと胸をなでおろした。
その他、改善点や他の視点からの撮り方なども教わった。
「おじいさんとワンちゃん、可愛いね」
どうやら犬好きらしく、ゴールデンレトリバーを飼っているとニコニコ顔で話してくれた。
「学校での写真はきみにしか撮れない一枚だね。…これも学校で?」
図書室で撮った一枚を指さす。
「はい。…友達に頼んで撮らせてもらいました」
文化祭のクラスの出し物が「執事とメイドカフェ」だったことを伝えると渡良瀬さんは「だからメイドさんなんだね」と笑った。
さらに「この女性は…」と言うので、男だと伝えると声を出して驚いていた。
「きれいな人だね〜。この空間によく似合っているし、きみも彼の魅力をちゃんと分かっているから、より美しい写真になっているんだね」
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