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――頭を底に向けながら、二人は落ちていく。
夏美は目を細めて微笑む。陽の光がどんどん届かなくなる中で、神宮寺夏美は美しく輝いている。
当馬は夏美を抱きしめた。天使が邪魔をしようとも、神が制裁を下そうとも、決して離すまいと。
夏美が当馬の背中に両手を回した。そして、ぎゅっと抱きしめ返す。
当馬は目を見開いた。夏美の首筋から痣が消えていく。神に愛された証である、三日月の痣が。
二人は、深く深く沈んでいく。神や天使が、人々を天へと導くのならば、悪魔の囁きの通りに行動した自分たちが、地の底に落ちるのは自然の摂理である。
二人は互いを見た。どちらからともなく顔を近づけ、誓いの口付けを交わす。誓う相手は神ではない。天使でもない。悪魔である。
瞳を閉じた悪魔たちは、夏の太陽も当たらぬ海の底へ、ゆっくりと溶けていった。
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