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1609年 イタリア ベネチア
GG1564は、このところ毎晩自分で作った望遠鏡で宇宙を見ることに没頭していた。
歴史上で世界で初めて望遠鏡で天体を観測したとされる人物として、GGはその重みを双肩に担いつつも、決して演技とは言えない驚きと感嘆の声を幾度も上げていた。
「すべすべしていると思っていた月の表面が、こんなにデコボコだったとは!」
「木星の周りを、小さな星が4つも回っている!これは、地球の周りを回る月と同じなのではないか?」
「天の川は、無数の星の集まりだった!」
これまで神秘のヴェールに覆われて迷信の温床となっていた宇宙は、望遠鏡によって真実の姿をさらけ出した。
オランダの眼鏡職人がレンズを2枚組み合わせて望遠鏡を発明し、翌年売り出されたそれをGGが買い、より性能の高い望遠鏡を完成させた。
宇宙の天体への並々ならぬ興味と探求心を抱いていたGGにとって、望遠鏡は自身の願望を実現する画期的な発明だった。
そして望遠鏡による観測によって、コペルニクスが唱えた地動説が正しいことを、GGは確信した。
しかしGGの友人たちは、地動説を主張したブルーノがカトリック教会に反対する異端者と見做されて、火刑に処されたことを例に挙げて、GGに地動説をむやみに唱えないよう忠告した。
広大無辺の宇宙を映し出す望遠鏡から目を離すと、GGは深い溜息をついた。
ローマ・カトリック教会が必死に擁護しようとする天動説は、望遠鏡が見せる宇宙と照らし合わせると、幼稚な考えでしかなかった。
なぜ真実を語ることが異端とされ、処刑されることになるのだろう。
GGは今しがた望遠鏡で見た月の表面をスケッチしながら、唇を噛みしめた。
月面にいくつもできたクレーター、それは地球から肉眼で見る月の姿とは大きく異なるものだった。
しかし、真実とはそういうものなのだ。
都合の良いきれいごとで真実を包み隠すのは、間違っている。
GGはスケッチをしていた羽根ペンをおいて、ふと呟いた。
「定時報告の時間だ」
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