もぞもぞ

1/1
前へ
/1ページ
次へ

もぞもぞ

十五歳になる公女が、一人で森にある花畑で花を摘んでいた。 すると、がささっ。草むらが動いた。 「何かいるのかしら?」 彼女がドレスのすそを持ち上げながら、 草むらに近づいてみると、白くてふわふわしたものが。もぞもぞと動いていた。 「何でしょう。これは?」 それは、ふさふさの毛皮で覆われており、うさぎのようにもみえた。 だが、肝心の頭がなく手足もない。 毛玉がもぞもぞと動いているのだ。 公女は、得体のしれないものにも、かかわらず。 興味本位で、触りたい衝動にかられた。 公女が手を伸ばして、それを触ろうとした。瞬間。 それは、牙をむき彼女に襲い掛かった。 暗転……。 夜になっても帰って来ない。娘を心配した男爵は、執事達を伴ってあちこち探し回った。 やがて、男爵達は公女が良く来ている森にやって来た。 花が咲き乱れる花畑まで来た時、男爵は絶句し、絶叫した。 血にまみれた、肉の塊が血を流しながら、ピクピクと痙攣していたのである。 男爵は気がついた。それは、我が娘だったものだと。花畑は、公女の血液で真っ赤に染まっていた。 「ああ、何てことだ!誰がこんな事を!!」 男爵は、娘の塊を抱き号泣した。 男爵達の後ろでもぞもぞと、うごめく白いものがいた。それは確実に獲物をとらえた。 ぐわっ! 一瞬にして、男爵と執事達は、白いものに喰われた。 彼らを丸のみにした白いものは消化をしながらまた、もぞもぞと、動き獲物を探し始めた。 ――もぞ……。もぞもぞ。もぞもぞ、もぞもぞもぞ。――
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加