0人が本棚に入れています
本棚に追加
もぞもぞ
十五歳になる公女が、一人で森にある花畑で花を摘んでいた。
すると、がささっ。草むらが動いた。
「何かいるのかしら?」
彼女がドレスのすそを持ち上げながら、
草むらに近づいてみると、白くてふわふわしたものが。もぞもぞと動いていた。
「何でしょう。これは?」
それは、ふさふさの毛皮で覆われており、うさぎのようにもみえた。
だが、肝心の頭がなく手足もない。
毛玉がもぞもぞと動いているのだ。
公女は、得体のしれないものにも、かかわらず。
興味本位で、触りたい衝動にかられた。
公女が手を伸ばして、それを触ろうとした。瞬間。
それは、牙をむき彼女に襲い掛かった。
暗転……。
夜になっても帰って来ない。娘を心配した男爵は、執事達を伴ってあちこち探し回った。
やがて、男爵達は公女が良く来ている森にやって来た。
花が咲き乱れる花畑まで来た時、男爵は絶句し、絶叫した。
血にまみれた、肉の塊が血を流しながら、ピクピクと痙攣していたのである。
男爵は気がついた。それは、我が娘だったものだと。花畑は、公女の血液で真っ赤に染まっていた。
「ああ、何てことだ!誰がこんな事を!!」
男爵は、娘の塊を抱き号泣した。
男爵達の後ろでもぞもぞと、うごめく白いものがいた。それは確実に獲物をとらえた。
ぐわっ! 一瞬にして、男爵と執事達は、白いものに喰われた。
彼らを丸のみにした白いものは消化をしながらまた、もぞもぞと、動き獲物を探し始めた。
――もぞ……。もぞもぞ。もぞもぞ、もぞもぞもぞ。――
最初のコメントを投稿しよう!