家電の反乱

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    「家電にAIが組み込まれ、ロボット化され始めたのはかなり昔だけど……。知っているかい? 黎明期の掃除ロボットは、単なる丸い円盤だったとか。その少し後に持て囃された配膳ロボットも、猫型ロボットと言いながら、ただ配膳ワゴンの上に猫を模した顔がついていただけとか」 「ええ、聞いたことがあります」 「それら全ての役割を担える究極のAI家電。そんな謳い文句で現在みたいな家事ロボットが普及し始めたのは、23世紀になってからだそうだ」  一見無関係な話に聞こえるかもしれないが、彼女はきちんとポイントを理解していた。 「でも、あまりに精巧な外見の家事ロボットは考えものですよね。AI制御で動くから人間そっくりの反応を示してくれるし、だからといってそれを人間みたいに扱ってるうちに、本物の恋人や奥さんって思い込んじゃう……。『俺の嫁』症候群ってやつでしょう? それで田中さん、独身なのに嫁とか愛妻弁当とか言ってたのかあ」  彼女の言葉に頷きながら、私の視線は、注文カウンターの方へ向いていた。「Aセットです。どうぞ」などの音声を発しながら、女性そっくりのロボットたちが食べ物を人間に渡している。  カウンターの奥にある厨房で調理しているのも、同じく女性を模したロボットたちだ。私の目には、どれも同じ外見にしか見えないが……。  私と同様にロボットたちを眺めながら、隣に座る後輩がふと呟く。 「家事ロボットが嫁扱いなら、それを買い換える時って、田中さんにとっては離婚と再婚になるんですかね?」 (「家電の反乱」完)    
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