第三話 アンナの願い

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 しかし、アンナは知っていた。  孫娘のフィービーは一番大切な友達であるリアのことをアンナに会うたびに教えてくれていた。  だからこそアンナはレオンスを推薦する手紙を書いた。  それは、リア・ルードウィンクが美貌の公爵令嬢だからではない。  リア・ルードウィンクが聡明で心優しい女性だと知っていたから。  強く、優しく、そしてとても不器用な主、レオンス・クロスターにとって生涯の素晴らしい伴侶になるだろうと確信したからだ。  そして、リア・ルードウィンクはレオンスを選んだというのに、さきほどからのレオンスの態度にアンナは苛立ちを募らせていた。  「まさかとは思いますが、ご自身の結婚相手としてリアお嬢様では不服とでもおっしゃりたいのですか?」  そんな傲慢な考えはレオンスの中に微塵もないことをアンナもわかっていたが、否定的な態度ばかりとるレオンスにちょっとした意地悪を言いたくなったのだ。  「そうではないっ!」  どんな時でも冷静な主から放たれた熱のある返答に、アンナは密かに満足していた。  アンナの言葉を完全否定したということは、リア・ルードウィンクに問題があるわけではないようだ。  言わずともレオンスが言いたいことなどアンナには全てお見通しだった。  「レオンス様、あなたは素晴らしいお方です」  「……」  アンナの言葉を否定するようにレオンスは静かに目を伏せた。
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