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「リア、お前は誰よりも美しい。そして誰よりも心優しい子だ……結婚相手となる夫は必ずお前のことを愛するだろう。だからなおさら、お前が愛した相手でなければならないのだ」
恋をして、愛を知って。
その相手と結婚できることがどれだけ幸せなことかをグレイグは知っていた。
そして、長女もそれを知っている。
「結婚生活は長い。どちらかが死ぬまで続く……良いことばかりじゃない。喧嘩もするし、自分の家の文化との違いに戸惑うこともある。愛していない相手との暮らしは、辛い」
矢面に立たされることの多い貴族社会で、伴侶の存在がどれだけ心の支えになるか、グレイグは身をもって感じていた。
だからこそ、娘にも自分のように愛のある結婚をしてほしい。
グレイグの願いはそれだけだった。
「オリバー」
グレイグは扉の前で控えていた老執事のオリバーを呼んだ。
執事オリバーは主人であるグレイグが言いたいことが全てわかっていたかのように、脇に抱えていた名簿を手にして読み上げた。
「我がルードウィンク家を除く7家の公爵のうち、未婚男性、なおかつリアお嬢様の年齢とつり合いがとれる者は2名のみ。しかしそれではあまりに選択の余地がなすぎるということで、10家の侯爵の中からも4名、さらに下位にはなりますが、20家の伯爵も含めればもう6名。ケンブル国内には計12名の候補がおります」
げんなりしているグレイグをよそにオリバーはさらに続ける。
「国外ですと、西のアスルッカ国の皇太子。あとは、かつての敵対国ではありますが南にミシュレ王国の第一王子、あとは」
「もういいっ」
それ以上は聞きたくないとばかりに、グレイグは声を荒げてオリバーの言葉を遮った。
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