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「リアお嬢様」
オリバーはグレイグからリアに向き直ると、持っていた夫候補の名簿をそっと差し出した。
「ここにはリアお嬢様に求婚されました国内外の男性の詳細なプロフィールが書いてあります。実際に集まった数でいえばこの何倍もありましたが、真に勝手ではございますが前もって私と旦那様でふるいにかけさせていただきました」
とうとうリアが結婚させざるを得ない状況となり、昨日までにグレイグとオリバーが必死に選び抜いた国内外の独身男性、計20名。
遅くまで議論し合っていたのだろう。
よく見れば、グレイグとオリバーの目の下には大きなくまができていた。
昨夜、リアの夫相手をふるいにかけている間、グレイグとオリバーはリアがまだ選ぶ立場にあることを唯一の救いだと話していた。
ケンブル国の貴族社会ではどんなに嫌な相手であっても自分より上の立場の男性から求婚された場合、基本的に女性側はそれを断ることは許されない。逆もまた然り。
公爵家で、現王妃の生家であるルードウィンク家だからこそ、女性側から結婚相手を指名することができるのだ。
好きな相手こそ選べないものの、嫌な相手を選ばなくていいというのは、この貴族社会では非常に幸運なことなのだ。
オリバーから名簿を受け取ったリアは、オリバーとグレイグを交互に見て、全て理解したと言うように深く頷いた。
「……明日の朝には。答えを、出します」
柔らかな細い声がグレイグの書斎に響いた。
とても短い言葉だったが、グレイグとオリバーにはリアの決意が伝わっていた。
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