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「理緒、どうしたの? 具合悪い?」
「えっと……。あのさ、これからうちに来ない? 無理かな?」
理緒は小さい声で控えめに言った。
今の時刻は夜10時過ぎ。私は一応実家住まいだが、ありがたいことに親からはほとんど干渉されない。テキトーに連絡すれば『はいはーい』で済む家庭なのだ。
「いいけど、どうしたの? 珍しいね」
「うん……千尋ちゃんにお願いがあるの」
「え、なに?」
「家に着いてからでいい? ここだと話しにくいから」
車内が暗いせいで表情までは分からないが、どうも恥ずかしがっているらしいということは雰囲気で分かった。
そこへ、タクシーの運転手が「どちらですか?」とぶっきらぼうに聞いてきた。理緒は慌てた様子で運転手に道案内をする。
その後到着したのは、どこにでもあるシンプルな外観のアパートだった。あとで割り勘ということで理緒が料金を支払い、2人でタクシーを降りる。
案内された1Kの部屋は、理緒の性格を表すようにキッチリ整頓されていた。壁に並べられた3台の本棚に本がぎっしり詰まっているのも理緒のイメージ通りだ。
「あのさ千尋ちゃん、今度ラーメン食べに行こうよ」
「……え? まださっきの話題引きずってんの?」
「ラーメンって聞いて思い出したの。この前雑誌で紹介されてたラーメン屋さんがすごく美味しそうで。でも一人じゃ行けないから千尋ちゃんと行きたいなーって」
「全然いいよ。ってかお願いってそれだけ?」
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