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すると理緒がまたモジモジし始めた。
どうやらこっちが本題のようだ。
「あのさ……。買い物も付き合ってくれないかな?」
「うん。全然いいよ?」
「服買いたいんだ。千尋ちゃんに見繕って欲しいの」
「……え? そういうのは玲奈の方がいいんじゃない?」
「あの子はちょっと派手だから。千尋ちゃんみたいに普通の格好したいんだよ」
万年しもむらの私にそんなことを言われても困ってしまうが、言われてみれば理緒の服装は地味というかフォーマル過ぎる気はする。
20代前半の若者が遊びに行くのに、カッチリしたブラウスに黒のスラックスというのも確かにちょっと場違いだ。普段の役所勤めの仕事着そのままという雰囲気ではある。
というより、理緒の場合はまず髪型だろう。伸ばしっぱなしのペタッとした黒髪が余計に地味な印象を与えているのだ。
「理緒、髪型変えてみたら? 少し色入れたり」
「え、髪は染めたことないんだけど……」
「じゃあ思い切ってやってみようよ。私も見てみたいし」
「……そう? 似合うかな?」
「うん。理緒は元々顔立ちは綺麗だからさ。あとコンタクトに変えたらもっと良さそう」
すると理緒は白い頬を少し赤らめた。こういうふとした仕草が可愛らしい。理緒が綺麗な顔をしているのは前から分かっていたのだが、本人がおしゃれに消極的なので何も言えなかったのだ。
「じゃあ買い物はいつ行く? 私はいつでも大丈夫だよ」
「……明日って無理? このまま泊まってもらって」
「うん。いいよ。どうせヒマだし」
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