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急に泊まりが決まってしまった。人の家に泊まるのは2年ぶりくらいだろうか。当時付き合っていた人の家に泊まったのが最後だった気がする。
相手はいま働いている食品工場の同僚だったのだが、向こうが他の人と結婚したいと言い出し、別れと同時に退職を告げられてしまったのだ。
あれからしばらく廃人のように落ち込んでいたものの、それも仕方ないことだったと今は割り切っている。相手も私と同じ女性だったのだ。
「理緒、近くにコンビニあったよね? 買い物行っていい? 何も準備してないから」
「あ、そうだね。行こっか」
今は酒が入っているので田舎者の交通手段は使えない。理緒いわく、コンビニまで徒歩2分とのことなので迷わず徒歩で向かった。
こうして夜遅くに買い物に出るのも久しぶりだ。理緒は酒が入っているせいか、いつもより陽気になっている。
「千尋ちゃんと2人で会うのいつぶり? 前に一緒にドライブしたよね?」
「去年の春ごろじゃなかった? 2人で寺巡りしたじゃん」
「あ、そうだった。私が誘ったんだっけ」
ちなみに、この子のフルネームは白石理緒という。高校で出会った頃は誰とも絡もうとせず、自分の席で本ばかり読んでいる子だった。話す機会ができたのは、たまたま席替えで隣の席になった時だ。
一方的に絡む私に最初は引き気味だった理緒も、何度もちょっかいを出すうちに少しずつ心を開いてくれた。
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