第三話

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第三話

 止まらずに振動し続けるスマホのバイブが着信を知らせていた。 「んっ、ンン……」  分かっているのに、手を伸ばす事が出来ない。 「っあ、…! 待って、でんわ…なってる……ぁ、んっ、んッ!」 「なんだよ。折角解れてきたところだろうが」 「でも、待って、……っぅ、あッ!」 「登録されてねえ番号だな。……もしもし。はあ? アンタこそ誰だよ。……司波? おい相馬。司波って奴、知り合いか?」 「!? っや、…! あ、ンぅ…!」 「もしもし、相馬さん……?」 「あッ、しばさ…んっ! っぅ、ちが……これは、ちがくて、ぇ……!」  ◇ 「えっ、もうヤっちゃったの!?」 「だって……なんかそんな雰囲気になっちゃったんだもん……」 「ばか、そこは勿体ぶりなさいよ! 軽い女だと思われるわよ!」 「だってぇー……!」  いくら周囲に人が少なく声を潜めているとはいえ、昼間の食堂でする話じゃないだろう……。  動揺に咽たのをお茶でどうにか治めようとして再び咽た。 「身体目的で飽きたらポイされないように気を付けなよ? なんか心配になってきた……」 「そ、そうだよね……」  そ、そうなのか……?  お茶でビチャビチャになった口元を拭いながら頭を過ったのは、まだ二回しか会っていないのに挿入なしの疑似セックスのようなことをした相手である、マッサージ師の司波さんだ。  オイルマッサージで、その……なんというか中々に厭らしいことをした後、時間の関係で次の予約も取らずにバタバタと別れ、個人的な連絡先の交換もしておらず、何となく会うのが気まずいというかどんな顔をして会えば良いのか分からずに悶々としていたら、あっという間に一週間も経っていた。  熱に浮かされてお互い好きだ好きだと言い合ったような気もするが、俺達は果たして付き合っているのだろうか?  ……いや、あんなテレビや雑誌に出てきそうなイケメンが、俺みたいな平凡な男相手に本気になる訳がない。あれは一時の気の迷いというか、女を食べ過ぎて飽きたから、ちょっと味変に男も摘まんでみたら案外いけたみたいな、多分そういう……でも、司波さんそんな人じゃないよな……。 「ちょっと待って……もしかして、そもそも付き合ってない……のかも?」 「は!? なにそれ」 「なんかちょっと良い感じの雰囲気になって、『好きです』って言ったら相手も『俺も好き』って言ってくれたんだけど、そのままの流れで……思い返したら『付き合って』とかって言ってない……かも」  そうそう、そんな感じで……。ま、まあでも、好きって言い合ったらもう恋人だよな? 「あんたそれ……」 ──ゴクリ 「セフレじゃない……?」  セ、セフレ……!?  嘘だろ……平凡故に一生縁がないと思っていたセフレに、この俺が……!?  身体のポジションとしては受け入れる側で翻弄されまくっていてそんな妖艶な雰囲気ではないがとはいえ、あのセフレ……!?  ……いや待て待て! そもそも俺はまだ挿入されていない。だからその、セ、セックスはしていない訳で、これは何だ……どういう関係なんだ? マッサージフレンド……マフレ? そんなフレンドあるか? セフレ昇格予定のマフレ? ……昇格ってなんだよ!  悶々としていた所に、高校時代の友人からメッセージが届いた。ザ・体育会で大雑把だが、明るくて俺みたいな奴とも仲良くしてくれる良い奴。 『前言ってたやつ、次の土曜で良いか?』  そういえば以前一緒に食事をした際に、最近あまりにも運動不足でまずいんだと、スポーツインストラクターであるコイツに相談したんだった。  いきなりジムに行くのはこわいからウォーキングなどから始めようかと思っているけれど、いざ休日になると死んだように眠って昼頃起床し、そこからダラダラとしてしまう魔の連鎖から抜けられないと。  そうしたら筋トレオタクでもあるコイツが、自分の家には簡単なトレーニング機材がいくつかあるから、それをやってみたらどうだと提案してくれた。『相手との予定』になっていれば、流石にそれに向けて起きたり準備したり出来るだろうと。  昔から何かと面倒見が良く、横暴で適当なようでいて兄貴気質で器用なところがあるコイツは、いつも呆れた顔をしながらこうして未だに面倒を見てくれるのだ。 『うん。時間はどうする?』 【今回の話は司波の嫉妬とお仕置き挿入有りがメインになる予定なので、「お友達とエッチなことしちゃうの!? 司波×相馬じゃないの!?」と心配になった方、いたらご安心ください。ただ友達→相馬の描写は出てくると思います。書けたら追加していきます】
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