第二話 *

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「やっ、あ、ンンッ! 何して……!?」 「ふぉえふぁ」 「そこでしゃべるなぁっ!」  ちゅっちゅっとキスするようにと吸い付いたかと思えば、舌全体を使ってゾリゾリと舐め上げられる。軽く歯を立てて甘噛みしてきたかと思えば、舌先でチロチロと舐められる。  口を付けているのと反対の方の乳首も、似たような刺激を指で絶えず与えられて、目の前がチカチカしてきた。 「んーーっ……!」 「おっと……」 「な、んで」 「すごい。本当に乳首だけでイけそうじゃないですか」 「イきた、っ……イかせて」  司波さんは嬉しそうにニッコリ笑い、穿いていたスラックスの前を寛げながら、ベッドへと乗り上げてくる。 「うん。一緒にイこうね」 「えっ……!?」  そのまま下着をズリ下げると、ブルンと勢いよく赤黒い物が飛び出す。 「ヒッ……」  ……お、大きい。根元が太くて、長さもあって、カリ高で、どう考えても俺の股間に付いているものと同じ名称とは思えないブツだった。色も、使い込まれているのか色素が沈着していてグロテスク。血管まで浮き上がっている。 「でっか……」 「そう? でも、そうですね……。相馬さんのよりは大きいかも。…………あ、その顔カワイイ」  何故か俺のムカついた表情に反応して、ピクリと更に上を向いたその股間に震えあがった。 「ホ、ホモなの?」 「え? いや、今まで男性を相手にしたことはないですね」 「え!? そんなに勃ってるのに!?」 「ええ。なので、相馬さんにも、俺を狂わせた責任……取って欲しいな」  スリッと、その規格外のブツが俺のモノに擦りつけられた。 「むりむりむり!」 「大丈夫。相馬さんならすぐ気持ち良くなれるよ」 「さけちゃう」 「はは、流石に今日は挿れないって……」  司波さんは自分の手にオイルを付け足すと、そのままグロテスクな股間に塗りたくった。続けて俺の下着に手がかけられ、抵抗虚しくスルリと容易く抜き取ると、ベッドの外へと消えていく。 「うつ伏せになって」 「むり……」 「ほら、仰向けのままだと、また沢山乳首弄られちゃうよ?」 「ンッ! うぅ……」  人差し指の背でスリスリと乳首を触られて、逃げるようにうつ伏せになった。 「うん、いい子……そのまま腰を高くあげて……」  誘導するように下腹部に手が差し込まれて、ぐっと上に押される。 「あ、っ……!」 「なに? これだけで気持ち良くなっちゃえるの? ほんと、才能あるよ」  クックッと楽しそうに笑う声が背後で聞こえた。あぁ、俺の優しかった司波さんは何処へ……。  ぬるっとしたものが尻の谷間を何度か往復して、ぞわぞわとした感覚が背筋を上ってくる。やがて、焼けそうに熱くて大きいものが、閉じた太腿の間にあてがわれ、にゅぷにゅぷと割って入ってきた。 「あぇ……」  つぷんと先端が抜けたが、再び引っ込む。  太腿の感触をあじわうかのように、つぷつぷと前後されると、先ほど見た、大きく張り出したカリ首の段差を思い出してしまう。あれが引っ掛かって、太腿の肉が動かされているんだ……。あれで中を掻き回されたら気持ちいいのかな……。  ひくっと尻が疼く。そんなところ、弄ったこともないのに……。 「あー……相馬さんの太腿可愛い……。本当は、初めて会った日からこうして触りたかったんです」  ついでのように尻の窄まりを親指で刺激される。オイルでぬるついた指はそのまま中へと入ってしまいそうだった。くるくるとフチをなぞられる。 「あっ、や、そこは……っ」 「うん。まだね」  まだ、ということは、いつかするつもりなのか……? 「今日はこっち」  ずちゅっと今までよりも大きく腰が動かされて、つぷんと出てきた熱い塊が、俺の股間の裏筋に触れた。 「ンんっ!? あ、っ……! や、あッ!」 「相馬さん、もっと肉付けましょう。今度ご飯でも食べに行こうか……」 「ふあ、っあ!」  俺ばっかり翻弄されて、余裕で喋っているコイツがムカつく……! 太腿にギュッと力を入れると、後ろの男が息をつめたのが分かって少しスカッとした。……しかし。 「あっ、ン!?」 「……あんまり可愛いことしないで? 優しくしたいから」  もう既に優しくないくせに! そう言いたいのに、口からはもう喘ぎ声しか出ないし、どうやら仕返しは逆効果になってしまったらしい。 「相馬さんも、そろそろイきたいでしょ?」 「んっ、ん!」  こくこくと頷くと、司波さんが後ろから覆いかぶさってきて、少し荒々しく頭を撫でられる。 「ひぁ、っ……!」 「ああ、こっちだけじゃイけないんでしたっけ?」 「へ?」 「胸も弄らないとイけないって、言ってましたよね」 「ッんああっ!!」  身体を起こされ膝立ちにさせられて、不意な胸への刺激。それだけで達してしまいそうになった。 「はは、ほんと最高」 「や、やめ、っ……!」  耳元で喋られて、熱い吐息が耳にかかる。もうそれすらも快感で、もう自分が何処で感じているのか分からなくなってしまった。全身あちこち気持ち良い。触れられたところ、全部、気持ち良くて……。 「んんっ」  声の聞こえる方へ顔を向けたら、司波さんの顔があったから、訳も分からぬままに自分から唇を寄せた。チュッと軽いリップ音。……? あれ、俺、今なにして……? 「ん、ッふ、ぁ」 「え……?」 「もっと、ほし、い……」 「……勘弁して」  噛みつかれるように口を塞がれて、熱い舌がねじ込まれる。 「んむ、っう……!」  口の中を隈なく探られるように舐めまわされて、酸欠で溺れそうだ。  下半身の動きも早くなって、遠くから、近くから……粘着質な水音が絶えず聞こえた。  絡め合っていた舌をじゅうっと吸い出されて、混ざり合った唾液が送り込まれたが、上手く飲み込めずに口端を伝っていって、それが熱い舌に舐めとられる。ペロペロと満足いくまで舐めた舌は、また俺の口の中に。 「んっ、ん、」  ギッシギッシと施術台の軋む音。突き上げるような動きで、俺よりも大きいモノが俺のモノも擦り上げていく。 「や、ふぁ、……っあ! あ、ンっ」 「もっと太腿ぎゅって出来る?」 「む、むりぃっ、アッ! あ、んやぁッ…! できな、い…」  気持ち良さに力が抜けて、足が開いていく。今は素股から程遠く、司波さんは俺の股間と肛門の間の皮膚を擦り上げているだけになっていた。 「……ここ握ってて」  施術台についていた俺の手に司波さんの手が触れて、導かれたのはお互いが擦れ合っているその場所で、オイルともどちらの先走りとも分からない液体でべしょべしょになっていた。 「やッ、あ! むり、っ……! こわいっ」 「こわくない。ほら、俺はこっち弄らないといけないから」  ぎゅっと両胸の乳首の先が引っ張られる。 「あっ、ン! や、ぁッ」 「こら、あんまり寄りかかられると動けないよ」  再び前かがみになるのを促されるように圧をかけられる。それすらも気持ち良くなって、困って彼の顔に擦り寄った。 「できない……っ、どっちもやってぇ……」 「……っ」  途端に乱暴に口付けられて、いつの間にか身体の向きが変わっていた。司波さんの太腿の上に乗るような形の対面座位。  お互いの勃ったものが触れ合っていて、司波さんはそれを俺の手ごと握る。今までとはまた違った感覚。その初めての刺激に、俺はたまらず司波さんの首に空いている腕を回して首筋に擦り寄る。 「ッくそ……!」  その余裕のない呟きに、何故だか俺まで動揺してしまう。ぎゅうっと胸が苦しくなって、更に身体は甘く疼く。 「ッア! や、ぁ、…ちくび、も、さわって、ほし…い、ァッ!」 「触るよ。触るから、これ以上煽らないで……っ!」 「んっ、んぅ……」  口と口が触れていないと呼吸が出来ないみたいに、直ぐに唇が塞がれた。  片手で二人のものをいっしょくたに抜きながら、空いている手で俺の胸を弄る。手探りで突起を見つけると、感触を確かめるようにコリコリと摘まんでから、ピンッピンッと指で弾かれた。ビクビクと腰が震える。  気持ち良さにぼーっとする頭に、ぐちゅっぐちゅっと粘っこい音、ぴちゃぴちゃと脳に響くような水音……とにかく色んな音が混ざって聞こえた。  しかし、そんな中でも不思議と鮮明に聞こえてくる「かわいい」「気持ちいい」「ずっとこうしていたい」「……好きだ」という声。  俺も、いつの間にか戯言のように「おれも」「おれも、すき」という言葉を溢していた。 「あッ、イく…! イきそっ、…ふ、ぁ」  のけ反って喉を晒してはくはくと息をする。苦しい。けど気持ちくて。晒した喉に唇が寄せられ、吸い上げられた。 「んンッ!」  そのままどんどん下がっていった唇は、散々弄られ腫れあがった突起にキスをする。 「あ! やっ、あぁッ…!」  舌先で何度も嬲られ、呼応するように下半身を抜く手も早くなる。握らされている股間が、触れ合ったソコが熱くて、硬くて、ビクビクと震えていた。もうお互い限界が近い。俺の手を覆う司波さんの手に更に力が込められる。堪らず胸にある司波さんの頭を抱え込んだ。 「ア、だめっ、まって…! あぅ、ンんっ……イきそ、」 「いいよ、イって。一緒にイこ」  急にグリッと抉るように鈴口を刺激される。同時に乳首が甘噛みされた。 「…っあ、やっ、! もっ、イっちゃ……――!」  ビュクッビュクッと勢いよく精液を吐き出すと、ほぼ同時に司波さんも射精して、飛び散った熱い精液が腹を汚す。 「んっ、んぅ…」  息継ぐ間もなく唇が塞がれた。既に散々舐めつくされた口内。弱い所を重点的に。酸素を奪われ、唾液で溺れそうになりながら、はふはふと必死に酸素を求めて口を開く。しかし与えられるのは大きな舌で、思い出したように鼻で息をし始める。涙で潤んだ視界のなかで、目の前の瞳は俺だけを見つめていて、とろりと溶けそうな温度をしていた。  ◇ 「あの、大丈夫ですか?」  かけられた声に、そちらを見上げる。穏やかなのに不思議と通る綺麗な声。 「……大丈夫じゃないです」  すっかり掠れた情けない声に、へらりと笑う目の前のマッサージ師。 「無理をさせてしまいましたね……」  いつだったか、コイツとそんなやりとりをしたような気がした。
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