運命をひねった二人。

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「メインは旅情を謳うことでした。いわゆるコラボ企画で、彼──甲斐斗真(とうま)さんの披露するトリックは、親子で楽しめるものでした。特にオランダ村では綺麗なイルミネーションが謎を解く鍵になっていまして……ああ、楽しかった記憶がいまはっきりと蘇りました」 「甲斐氏の口にした『仲良し探偵倶楽部』はさぞ盛り上がったことだろうね」 「はい。そりゃあ大盛り上がりでした」江川は頬を綻ばせた。「そのぅ、私は第二の保護者として倶楽部の彼・彼女らと日本各地を巡る立場でして。気付いたら、甲斐さんの用意する謎に巻き込まれてしまうタイプだったんです。いわゆる「探偵が死神パターン」でした」江川が自嘲の笑みを象る。「子供を預ける親御さんにとってはさぞ不安なことだったでしょうが、当人達は終始目を輝かせていて……。彼・彼女らが大人になる過程で、良い経験として昇華されるのを願いたいですね」  端葉の瞳に、空を仰ぐ江川を、熱烈に慕う子供の姿が映った。幻覚だとは理解している。  端葉は胸に手を当てた。弱火で炙られるような、針の先端で何度も突き刺されるような、そんな疼きがあった。
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