運命をひねった二人。

10/20
前へ
/20ページ
次へ
 なぜ俺は、憎き探偵が自分に意識を向けるような挑戦状を送り付けていたのだろう?  そこに、物語としての意義があるように思えてならなかった。が、あまりにも長く放置されていた問題はすっかり錆び付いた南京錠のようで──それを解錠するための力は哀しいかな、海堂には捻出できそうにもなかった。  老いとは、恐ろしいものだ。  海堂は太陽の眩しさを建前に両眼を細めた。宙を踊る花弁が、回想を引き連れてくる。「よぉく振り返ってみなよ。憎さと同じくらいにエキサイティングな思いもさせてもらったろ?」甲斐のその発言が、回想の歯車の油となって海堂の唇を自然と動かさせた。 「覚えている……。ドイツにハワイ、スペインで顔を合わせたんだ。あの頃は二人とも若かった。詳しくは語れないが、アイツとは──お前さんの言葉を借りれば──いい勝負ができた。エキサイティングだったという点は、癪だが認めざるを得んだろう」 「オレにとっちゃ、ヤツとの一番の思い出はオランダでの攻防だな」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加