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「オランダ? ほう……」記憶にない攻防だった。認知の老化によるのだろう。海堂は首筋を掻いた。「まあ、なんだ。ああだこうだと言ってはいるが、結局のところ奴がいたから俺は退屈せずに済んだのだろう」
それが、挑戦状を送りつけた理由なのか? 退屈を忌避するために、奴を呼ぶ気になっていたのか?
しゅるりと紐が解けるように、探偵憎しの情が消えていく。
そうやって冷静に答えのない過去を見つめ直す海堂の隣で、甲斐は車椅子の背にもたれると顎を引いた。
「オレもヤツ──正確にはアイツらと表現するべきか──に生かされていたし、アイツらもオレがいたから盛り上がってこれたんだろう。くくっ、まさに宿命。あるいは運命なんだろう」
そのとき。海堂は、小さなシャボン玉が割れるような音を聞いた。視線が甲斐に移る。
アイツら、という言葉に引っ掛かりを覚えたのだ。
「ところで」
海堂と視線を交わしは甲斐は、それから、明日の天気でも尋ねる口調で続けた。
「闘いを止めてから、あの子供達はどうしたんだ。仲良し探偵倶楽部もどうなった」
「は」
「もう時効だろう? 腹を割ろうぜ、探偵サン。こんな所で再開するなんて神様のお導き以外の何ものでもないだろう。オレは別に、あんたとケンカしたいわけじゃないんだ。な? わかるだろう──」
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