運命をひねった二人。

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 端葉の隣にいた江川(えがわ)アケチが、しきりに頬と鼻を掻く。思考をまとめる際の彼の癖だった。端葉は江川の発言に含まれた説明に気付かないフリをして、視線をへ戻した。 「海堂──怪盗をもじった偽名だろうが──は、手先の器用な男だった。私は彼の挑戦状を受けて闘いの舞台へ赴いていたわけだが……実に魅力的な謎を用意してくれていてね。まさにマジックのショーを鑑賞している気分で、なかなか歯応えがあった。私は不器用だから、彼の真似はできまいよ」 「ははあ。ぼ、僕の相手は、子供のイタズラを複雑にしたようなトリックで散々翻弄してくれましてね……。ただ、お恥ずかしい話、僕ひとりでは歯が立たず子供達の知恵を借りねばなりませんでした。あまつさえたまに見栄を張って小細工を弄してもすぐにバレる始末で……。普段は手品師として子供達と触れ合っているからこそ、余計に含羞を催すものでして……ええ。いやはや子供の頭脳は侮れないですよ」  だから決して彼らに子供騙しは通用しないのだと、そもそもするわけがないのだと、江川は弁解した。端葉は鷹揚に頷いた。
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