運命をひねった二人。

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「手品師だからといって全てを見抜けるわけじゃないだろう。それに江川さんの立場は……」端葉は口にしかけた言葉を呑み込んだ。「いえ。その、海堂に言わせれば私も内心の怯えが顔に滲んでいたそうだから、まあ、探偵といえど完璧でいるのは難しいというわけだ。実際、自分のロジックが正しいのかギリギリまで悩むタチでね……不安は常に付きものだった」  それは物語として相応しくないから、悩みを吐露することはなかったが──端葉は胸の裡で付け足し、介護職員の用意してくれた緑茶を啜った。ほのかな苦味が舌を楽しませてくれる。 「やはり生まれ故郷で飲む茶が体に合うな」 「おや、端葉さんがお茶派とは」
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