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思えば、謎と対峙するときは常に孤独だった。その寂しさを紛らわせる方法はアルコールを摂取するようにして茶を嗜むことだけだった。誰の──自らの声さえも響かない取り残された環境で、端葉は沈思黙考することを選んだ。選ばなければならなかった。
探偵の活躍はすでに終わったことだ。終わったからこそ、手元に残ったものが嫌でも視界に入ってくる。
そこには、何も無い。
端葉は類稀な推理力を武器としていたが、界隈から隠居した身ではそれも茶渋と同じだった。そこに味わいがあったことを残し、やがては綺麗さっぱり流されて消えてしまうもの。端葉もまた海堂と同じ路を辿ったのだ。
「次は、孤高でない探偵でありたいよ」
誰にも聞かれなかった呟きは、春愁の苦味を美しく濾された陽光に溶けていった。
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