運命をひねった二人。

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 甲斐が滔々とネタを割る横で、海堂は再び記憶を叩く。と同時に──不明瞭ながら──微かな齟齬も混じり始めていることに気付く。  気持ちの悪い違和感だ。  海堂はシャッフルを止めた。気を落ち着かせ、記憶の整合性を図るためだった。庭には、海堂と甲斐の他に二人の老男がいる。二組の距離はそう遠くない。海堂は声量を抑えつつ、甲斐の話を遮っていった。 「俺にも腐れ縁がいたことを思い出した。今みたいにすぐトリック……ネタを暴き立てようとする嫌な奴でな。そうそう、ちょうどネズミのように隅々までしつこく」 「ほう?」甲斐の、神経質そうな双眸がきらりと光った。「逆にオレの腐れ縁はどんな小細工もすぐに露見するヤツでな──何回か互いの立場を賭けて勝負する機会があったんだが──必死に笑いを噛み殺したものさ。傑作だったのは小細工を暴かれた瞬間の、ヤツの強張った顔でなあ」  勝負、という単語に海堂の指がぴくりと動いた。相手は故意か否か、一気に間合いを詰めてきたのである。海堂は僅かに頬を硬くした。警戒心と、海堂の自尊心に小さな傷を与えた甲斐に対する不快感から。  海堂は努めて冷静に返した。
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