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こいつがもし奴なら、いくら時を隔てた邂逅だろうが、負けてはなるまい──。
「ハッ。でも、そんな子供騙しに真っ向から挑むソイツの心もガキだったんだろうな。想像すると滑稽で情けないが」
「ああ。そうだろうな」
遠回しに甲斐を揶揄したつもりが意外にも軽く受け流され、海堂は目を丸くした。理解できなかったのか、あるいは──。
甲斐は口許に明確な皮肉を浮かべて続けた。
「ともかくヤツは子供騙しが好きで、憐れにも独りでは何もできない人間だった。言ったように、小細工でボロを出しまくっては焦っていたのだからな。ふふ」
甲斐はちょんと髭を撫でてから、海堂を一瞥した。
独りでは何もできない、だと?
海堂は奥歯を噛んだ。
たしかに自らがプロデュースした謎には共犯を必要とするトリックも用いてきたが、全体的な意見として纏められるのは癪だった。海堂はふっと息を抜く。
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