古傷

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 当時、僕はまだ学生で。   心は荒んでやさぐれていた。  そして、僕の部屋に入り浸っていた彼女は心の病に侵されていった。  死にたい病ってヤツ。  今思えば、元々不安症だったんだな。  どこか儚げだったが、温かくて優しい素直な子だった。  今思い返しても、原因がなんだったのか、僕にはよくわからない。  僕たちは近くにいたはずだったが、心はそれほど通じ合っていなかった。  それで良かった。  別に大恋愛をしたかったわけじゃない。  そのとき楽しかったらそれで良かった。  そんな考えは今でも変わらないんだが。
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