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ちゃんと“八重子”と呼ばれるようになってまだ数週間。でも何故だか分かりませんが、今では昔から“八重子”だったような気がしております。
「八重子さん…」
私を呼び止めたあと、そう言ったっきり、顔を赤らめて、正一郎様は再び固まってしまわれました。
「ご主人様、どうなさいました?」
そう尋ねながら、私はピンと来ました。中学3年生とはいえ、正一郎様も立派な殿方。
私に向かって殿方がこのような仕草や表情をされる場合は、私の知識から想像するに、なにかこう…、なんと言いますか、いろいろと大きな声では言えないような、性的な“ご奉仕”をお望みのような気がいたします。
「もしかしてご主人様?
“そういうこと”をお望みでしょうか。
そういった“ご奉仕”内容につきましては、お父様の勘太郎様と交わした私の雇用契約書の第35条、及び別表の附帯項目の中に“そういった”場合の条件やご奉仕可能な内容、その際にご主人様にお守りいただきたいお約束ごと等についての記載がございますので、その範囲内の“ご奉仕”でしたら今すぐ対応可能でごさいます。ただ、ご主人様のご年齢によって可能な“ご奉仕”内容が変わってまいりますので、必ず別表のその2もご確認くださいね」
「えっ、い、いや、違う違う。
そんなんじゃない…!ないから…」
「あら、ではどういった“ご奉仕”をお望みで…?」
想像が外れて、私もしばし思考停止。
やはりこのお屋敷に来る前の記憶が無いのは、こういった“想定外”の事象が発生した際、不便でしょうがありません。
「や、八重子さん!
その…、折いってお願いがあるんだ」
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