01 そうして僕は死んだ

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――カランカランカラン 「おめでとうございます!  貴方は選ばれました!」 紅の瞳に赤い髪の少女が現れる。 「なんだ?」 清空さんが拳を構える。 ってことは敵? 「そうお主は選ばれた」 漆黒の瞳に黒い髪の少年。 「何に選ばれたというのだ?」 「私の名前は柊万桜」 「余の名前は大神心。  特別にかみさまと呼ぶことを許そう」 かみさま? ふざけているのか? 「ちなみにふざけてなどいないからね。  暴れるドラゴンがいれば。  とことん煮込み。  輝くお宝あれば。  みんなで山分け。  大胆不敵電光石花  皆の笑顔はあたしのためにある!」 万桜さんがそう言ってニッコリと笑う。 「単刀直入に言おう。  主の目的は?」 「そのファイヤードラゴンをおすそ分けしてほしいの!」 万桜が頭を下げる。 「おすそわけ?」 シエラが首を傾げる。 「この先にある村があるの」 「ほうほう」 「そこは強力なファイヤードラゴンに襲われ田畑は荒らされ。  飢えに飢えた狼にも狙われもう壊滅状態。  衛生状況も悪いので伝染病も……」 「で?」 万桜さんの言葉に清空が笑う。 「だから少し肉を分けてほしい。  飢えた子どもたちの腹だけでも死ぬ前にせめて満たせてやりたい」 「で、選ばれたというのは?」 「その子がベルゼブブの呪いの標的になる」 「それはめでたいことなのか?」 「余は呪いを弾く力がある」 かみさまがそういうと清空さんが息を吐く。 「シエラ、お前が狩ったんだお前が決めていいぞ」 「呪いならしいたけくんが食べたから大丈夫」 「え?」 「交換条件不成立だな」 「うん」 清空さんとシエラさんが笑う。 「そ、そんな……」 万桜さんとかみさまの目に絶望が宿る。 「交換しなくてもドラゴンの肉はわけますよ?」 「え?」 シエラさんが凄く天使に見える。 それはふたりも同じだろう。 奪えば憎しみを手に入れ。 わけあえば笑顔が手に入る。 これから4時間半後。 それが今からに至る。 僕はあえて口に出さないが…… 思っていることがある。 おなかすいた。
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