small world

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夏の暑い日。 ある駅の改札を出てそれぞれの目的地へ向かう人々。 イベント会場の多いその地域は、その日いくつかのイベントが予定されていた。 それぞれの会場へそれぞれの思いで向かう。 何時間も前からいい席をとるために並ぶ会場もあれば、始まってから入場してもガラガラの会場もある。 路地裏の小さな喫茶店。開場時間まで暇をつぶしている女子高生らしき二人。 「ちょっと早く来すぎちゃったよね」 「このごろよく電車止まるし。早めに来るにこしたことないでしょ」 そこへ帽子を目深にかぶった男性客が一人来店。二人組の脇を通って奥の席に座った。 「そーだねーあー楽しみだーー」 「でもさーあ、楽しみであればあるほど、終わったときのからっぽ感がきつい」 「次の日学校行きたくなくなる」 「バイトは行きたくなる。またチケットとか買うお金貯めないとなんないから」 「チケットはさ、まだお小遣いでなんとかなるの。服がお金かかる。見てもらえるわけじゃないのにさー、おしゃれして行きたいから」 帽子の男と一瞬目が合った。男は慌てて目をそらす。 二人はそのまま楽しそうに話を続けた。 「そろそろ行く?」 「あー外暑いだろーねー」 二人が出ていくと、男はほっとしたようないぶかしいような顔をした。 「お待たせ―」 店員が男の注文を持ってきた。 「あの二人、おれのファンかと思った」 「え、違うでしょ。体育館に行くみたいなこと話してたよ。なんかのスポーツの選手権やってる」 外に出て、二人が話している。 「あの奥の席の男の人さ、マリビルのセイジじゃなかった?」 「へえ?見なかったからわかんない」 「今日この近くでソロライブやるって、ヤマシタが騒いでたじゃん。だから本人かも」 「あー、ヤマシタ。今頃この炎天下根性で並んでんのかね」 「セイジ見たって言ったら発狂しそう」 「あはは、させてやりてー。あいつむかつくんだよね。マイナー競技オタのあたしらのことバカにしたような目で見て」 「自分の好きなものが世界一だと思ってね。そりゃマリビルはいま日本で一番注目されてるバンドかもしれないけどさ」 「あたしらにはどおーでもいいもんね」 「それがむかつくからつっかかってくんだろうね」 「あ、コンビニ寄っていい?ガム買いたい」
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