2. 僕の推しはイケメン【男子高校生・慧人(18)】

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2. 僕の推しはイケメン【男子高校生・慧人(18)】

【男子高校生・慧人(けいと)(18)】  午後4時でもまだ36℃あると駅の液晶掲示板が教えてくれた。ホームから延びる線路の先には陽炎(かげろう)が見えた。 「あちーな。早く電車来ないかな」  慧人(けいと)はそうぼやきながらホームの自販機でペットボトルのコーラを買った。冷たい炭酸が喉越しよかった。一口飲んで手を下げると、隣に立っている(すぐる)が当然のように手を出して要求した。黙って渡すとすごい勢いで飲み始めたので「おい!」と奪い返した。  自他ともに認めるイケメンの卓。慧人が憧れるIF5のハルに「なんとなく」似ているけれど、自分は何でも許されると思っている王様気質はハルの対極だ。でも慧人はそんな卓のことが嫌いではなかった。むしろ好きなのかもしれない、とさえ感じていた。  慧人が通う男子校は都内といっても郊外のいわゆる「都心のベッド・タウン」と呼ばれる地域にあった。最寄り駅は登下校時だけ慧人の学校の生徒でごった返すが、それ以外の時間帯は利用客も少なく、のんびりとした駅だった。    部活に入っていない慧人は、やはり同じ「帰宅部」もしくは「部活浪人」である仲間と一緒に下校していた。今日もいつも通り、帰りの清掃の後もクーラーのきいた教室でだらだらと遊んできた。特に急いでいるわけでもなかったが、なんとなく都心に早く着く急行に乗りたかった。でも仲間が歩きスマホでゲームに興じていたせいで歩くのが遅くなって乗り遅れてしまった。暑いのに。 「次、各駅じゃん。どうする? 暑いから乗っちゃう? それとも次の急行を待つ?」  そう尋ねても、ゲーム好きの大夢(ひろむ)(りく)は返事もしない。両手でスマホを横にもったまま、対戦ゲームに夢中だ。慧人はイラっとした。 「いつまでやってんだよ。道でもホームでもさ。あぶねーぞ」  そう突っ込むと、隣で(すぐる)が「ガチで命がけのバトル・ゲームになってんじゃねーかよ。お前ら、いつかリアルで死ぬぞ」と笑う。  
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