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「ここは?」 到着したとの御者の声に、馬車を降りながら辺りを見渡すも、見えるのは荒れ果てた数軒の家屋のみ。 目的地は、マリーの生家でもある旧領主邸のはずだけど。 「お嬢様、こちらが私の生家になります」 マリーの声にそちらを振り向けば、そこにあるのは二階建ての小さな家。 確かに周りの家よりは少しは大きい気がしないでもないけど、マリーだって元は男爵令嬢だったはず。 とてもじゃないがその生家には見えない。 「本当に?ここが?」 「はい」 私としては信じられない気持ちが強いけど、その家を見るマリーの目には確かに懐かしさが浮かんでいて、その言葉が真実であることを物語っている。 「……とりあえず、入ってみましょうか」 いつまでもこんな道端に立っていても仕方ない。 そう気を取り直して旧領主邸の敷地内に足を踏み入れる。 本当に形だけといった門をくぐり抜けると、一応はかつては庭であったであろう景色が目に入る。 もっとも、今は雑草が我が物顔で生い茂るだけだけど。 「この場所には、昔は畑があったんです。 そこで野菜を育てて、生活の足しにしていました」 私の視線に気が付いたマリーがおしえてくれる。 確かにマリーの実家は、男爵家とはいえ有ふではなく、庶民と変わらない生活ぶりだとは聴いていたけど、どうやら私の想像以上だったようだ。
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