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そう意気込んで掃除を始めてみたものの……。 「あら?床がびしょびしょになってしまったわ」 「あ、お嬢様!モップはまず絞ってから使いませんと!」 「あら、ガラスに傷が付いてしまったわ」 「お嬢様!窓拭きはモップを使いません!」 「それなら掃き掃除を……って、何故かしら。埃が全然集まらないわね」 「お嬢様!ホウキを力いっぱい振り回してしまっては埃は飛んでしまいます!」 最終的に、ハタキで埃を払おうとした絵画が床に落下したところで私は手を止めた。 「……。」 「お嬢様、やはり掃除は私が致しますので……」 「そうね、お願いするわ」 どうやら、私が手を出すとかえって汚してしまう結果にしかならないようだ。 まさか掃除がこんなに難しいものだったなんて……。 幼い時から、令嬢としてのマナーや教養も、勉強だって何だってすぐに出来た。 だから、自分は何だって器用に出来るものだとばかり思っていた。 だが、いざ公爵令嬢という括りを外した私はどうだ。 掃除すらまともに出来ない。 マリーは初めてだから仕方ないと笑ってくれたけど、実際の私は生きていくために何一つ自分では出来ない小娘に過ぎなかったんだ。 その事実が、何だか無性に笑えてしまい、邪魔にならないように戻って来た馬車の中で、私は一人ずっと笑っていた。
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