人事を“えーあい”が支配する

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 達也も、“損失の要素は無条件で排除する”といった考え方にブレはないものの、自身の下す裁量が正しいか否か、となると、必ずしも、絶対的な自信を持っているわけではなかった。会社のトップである社長がこの判断を見誤れば、当然ながら会社の業績に悪影響を及ぼす。達也は、さまざまな情報をかき集めて、人工知能にその判断をさせようと考えた。  ひととおりの情報などをコンピュータに認識させ、ひととおりの準備が整うと、達也は、直々に、全社員に対してその旨を通達した。  こうしてAIによる、社員の業績審査がはじまった。すなわち、AIが社員のリストラを決めるようになってしまった。  やがて、社長への忖度が、何の意味も持たないことを知った多くの社員とのあいだには、すこしずつ溝が出来ていった。  かくして、達也は、社員たちの忖度を自身への“人望”と勘違いしていたようである。
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