副校長先生

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「春花、給食袋忘れてる」 娘が上池小学校へ入学して2ヶ月。 やっと少し学校へ慣れてきたようだけど、まだまだ私は心配だった。 友達はできたかな? 勉強は大丈夫かな? 給食は食べれてるかな? 不安は尽きない。 子供は慣れても母親の私が慣れていない。 わからないことばかり。 警察官の夫に何の理由もない不安を相談して、心配させるわけにはいかない。 「仕方ない、持って行こう」 今日はパートが11時だから間に合う。 私は学校へ着くとマスクをし、保護者カードを首から下げた。 学校へ来たのは入学式のとき以来だから、教室がどこだかわからない。 運動場は、はしゃぐ元気な子供たちでいっぱいだった。 自分の小学生の頃をうっすらと思い出す。 ちょうど休み時間だったようで、近くの上級生らしい男の子に「1年2組の教室はどこかな?」と聞くと丁寧に場所を教えてくれた。 私は2つある校舎の北口棟に来ていたが、隣の南口棟が1年生の教室があるらしかった。 一度校舎を出て外から南口へ向かう。 途中で大きなハンドバッグを持った若い男性の先生とすれ違い、頭を下げる。爽やかな笑みを返してくれた。 今の先生は大変だろうな。保護者にも気を使わないといけないし……モンスターなんだっけ。 南口へ到着し、中へ入ろうとすると放送が鳴る。 「みなさん、副校長先生のお話があります。体育館に集まって下さい」 運動場や教室の子供たちはすぐに体育館へ向かった。 低学年の子はまだ場所がわからないためか、上級生が手を繋いで連れて行く。 すごい……よく教育ができている。 私が小学生の頃と違う。 放送自体、気づかなくて遊んでいたのに。
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