副校長先生

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全員の子供たちが体育館へ行ったため、辺りは一気に静まり返った。 私は誰もいない廊下を歩き1年2組の扉を開け、娘の机の上に給食袋を置いた。 まだパートまで時間があったので家事を済ませに家へ帰る。 すると30分後に「ただいま~」と娘が帰ってきた。 「え?早くない?今日は午前授業じゃなかったはずだけど……」 「先生とみんなと帰ってきたよ」 なんだ。じゃあ、わざわざ給食袋を持って行くこと無かったなーと思っていると娘が「今日ね、副校長先生の挨拶があったんだよ」私の袖をしきりに引っ張り言う。 そういえば放送で挨拶があるって聞いたな。 なるほど、新任の先生の挨拶だったのね。 こんは時期に転勤とは、やっぱり公務員とはいえ大変だな。 私は娘の高さまでかがんで、微笑んだ。 「新しい副校長先生はどうだった?」 「新しい先生?」 娘は目を丸くしていた。何か驚いているようだった。 同時に携帯が鳴る。夫からだった。 仕事中にかけてくるなんて今までの生活の中で記憶にない。 「もしもし、俺だ。大丈夫か?春花は大丈夫か?」 「どうしたの。そんなに慌てて。春花は学校から帰ってきて今は目の前にいるわよ」 「よかった……悪い。こっちはバタついてるから、詳しいことはテレビを見ればわかる。落ち着いたらまた電話するよ」 一方的に電話は切れた。 私は疑問に思いながら言われたようにテレビをつける。 地域番組のニュースで速報が流れた。 凝視すると隣の地域の緑川小学校が映っている。 『緑川小学校へ男が侵入し、男性教諭と小学生3名が死亡』 「うそっ、緑川小学校で?怖い……近所だから尚更。こんなこと言っちゃダメだけど、春花の学校じゃなくてよかった……」 大きく息をついて娘を見ると、何か言いたそうにもじもじしている。
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