65人が本棚に入れています
本棚に追加
「私もごめんなさい。貴方の気持ちも知らないでいきなり手紙なんか押し付けて。それで困らせたなら本当に悪い事をしたと思います」
彼女のその言葉に俺は戸惑った。
「いや、いいんだ……。俺は別に…――」
「一つ聞いても良いですか?」
「何……?」
「断る理由を教えてくれますか?」
「ッ……!」
其処で理由を教えて欲しいと聞かれると、顔から急に冷や汗をかきそうになった。
「そ、それは…――」
答えられずにいると彼女は思いきって聞いてきた。
「正直に答えて下さい。貴方に彼女は居ますか?」
「え……?」
「私、どうしても知りたいんです……!」
真剣な顔で聞かれると俺も隠さずに正直に答えた。
「居ない――」
「そうですか、分かりました……。貴方に彼女さんが居るって言われたら断られる理由が悲しくて、泣いちゃう所でした」
明るく笑うと落ち込んだ様子も見せずに、彼女は手紙を持って話す。
「あの、一つだけお願いがあるんです。たった一度でいいです。私と一日デートしてくれませんか?」
「え……?」
「お願いします、それで貴方の事は忘れます……!」
彼女に突然『デートをして欲しい』と誘われると、俺は驚いて焦った。
「そ、それは……!」
「私、相葉さんのことが本当に好きなんです……! 断られておいて図々しいのは自分でも解っています。でも、せめて貴方との思い出を私に下さい…――!」
真っ直ぐな純粋な思いに、俺は彼女にどう言えば言いのか分からなくなった。でも、何故かその誘いを断われ無かった。きっと彼女の真剣な瞳が、そうさせたに違い無い。其処で考えると一言返事をした。
「一日だけなら……」
「ほ、本当ですか…――!? 嬉しい! ありがとうございます!」
彼女は明るく無邪気に喜んでいた。正直、自分でも戸惑った。誰かと一緒にデートするなんて考えもしなかった。だけど、目の前で少女が嬉しそうにしている姿を見ていると、その『選択肢』も悪くないかも知れないと感じた――。
最初のコメントを投稿しよう!